進路の本棚 ― 本のリレー紹介[第43回]紹介者=籠山 学教諭/登別明日中等教育学校
2019年10月26日

創造ある人生に向けて
◇広中平祐『生きること学ぶこと』(集英社文庫)
この本は、数学のノーベル賞といわれるフィールズ賞を39歳(1970年)で受賞された広中平祐先生の著書で、1984年の発行。私が高校時代に読んだものです。その頃の私は「何で数学を勉強するのか、何の役に立つのか」と疑問を抱いていました。これは数学の教員になって以降、いつも生徒から聞かれる声でもあります。と同時に高校生の私は「数学者とはどのような天才的な才能を持ちあわせて、どのように特別な勉強をしているか」に興味を持っていました。
そんな時に出会ったのが本書でした。この本には、数学の話も多少ありますが、難しい本ではありません。広中先生ご自身の研究者としてだけでなく、人としての生き方やありかたを幼少時代からフィールズ賞受賞後まで語る本となっており、私が大きな影響を受ける1冊となりました。35年前に出版された本ですが、今の高校生が読んでも、はっと気付かされることが多くあると思います。
広中先生は「創造のある人生こそ最高の人生である」「創造する前にはまず学ばなければならない」と仰っています。インターネットが普及し、知りたい情報はすぐ手に入る現代ですが、人が人として生きていくために見失ってはいけないことがきっとあると思います。数学という学問を通してそんなことを感じさせてくれる1冊だと思います。数学に興味のある生徒も、なぜ勉強するのか努力するのか疑問に思い悩んでいる生徒も、また夢を実現したい生徒も、ちょっと手にとって読んでみてはいかがでしょうか?