進路選択 迷っているなら進学を

2019年10月25日

「とりあえず」でもよい


希望進路が未定の高校生に進学を勧めたい。「とりあえず」でもよいから進学してみてはどうだろうか。2年~4年間の学費が数百万円にもなるのに「とりあえず」とは、ずいぶんといい加減に聞こえるだろう。勧める方は無思慮と思われても仕方がないし、そう言われて進学する方も安易過ぎるかもしれない。

しかし、自分の適性や本当にやりたいことがぼんやりとしたままでは就職してみても長続きしない心配が大いにあるし、そこから転職を図るにも(応募資格にある学歴や職歴の条件を満たせないために)次の仕事の選択肢は思うほど多くないだろう。なかなか望む仕事にめぐりあえず、新しい職が見つかるまでのつなぎのつもりのアルバイトが2年、3年と長引いて焦った挙句、しかたなく不本意な再就職したために、またもや長続きせず……。暗い絵を描き過ぎていると思う向きもあるかもしれないが、絵柄そのものに誇張はないはずだ。

若いうちは進路にいろいろと迷っても仕方ないかもしれない。ただ、勤め先を変えて別の道を探すにしても、様々な能力や経験、そして根拠ある自信を持ってないと難しい。うまく職を見つけられたとしても、そこで新しい仕事を学んでいく姿勢ができていないと危うい。この時代の職業社会を渡っていくには、それぞれの仕事や立場に応じて勉強を続けていく必要がある。学ぶ姿勢ができていないと、つらく、苦しく、面白くない社会人生活になってしまう。能力、経験、自信は、高校で得られないわけではないが、卒業後の積み重ねは不可欠だ。


「充実した先延ばし」を


ここでまとめよう。自分の適性や志向の見極め、そして、職業社会で生きていくための学ぶ姿勢づくり――これらが希望進路が未定の高校生に大学・専門学校進学を勧める理由、一度は進学を検討してもらいたい理由だ。

将来の夢や就きたい職種がまだ見つからないのなら、大学などへの進学によって決断を先延ばしするのもひとつの手ではないか。たとえば大学なら4年間(正味は3年間くらい)で、十分な判断材料を仕入れて考えに考え、自分の将来像をはっきりさせよう。冒頭に「とりあえず」といったのは、そういう意味だ。

ただ、この先延ばしは単なる時間稼ぎにならないようにしたい。ぜひとも充実したものにしてほしい。充実とは、どういうことか。大学・専門学校の勉強を主軸に、サークル、アルバイト、趣味、人間関係づくりなど、必要や関心のあるものに進んで取り組むことだ。そこでやり抜く力、やり続ける力が養える。職業社会に役立つ具体的な技能を身につけたり、メンタル面を鍛えたりすることもできる。せっかくお金と時間をかけるのだから、長い目で見て自分の財産になり、ゆくゆくは周囲に還元できるような力をつけてほしい。

それなら大学・専門学校への進学を検討してみようか――そう思った人は、高校での勉強に勤しみつつ、次の2つの行動を起こしてみよう。

(1)ちょっとでも気になる大学・専門学校があったら、オープンキャンパスに出かけてみよう。最初は友だちに付き合って行くのでもよい。

(2)大卒・専門学校卒の社会人10人くらいに話を聞いてみよう。自分の父母や兄姉では、聞く本人と近すぎて客観的な話になりにくい。また学校の先生ばかりだと職業に偏りがあり過ぎる。できるだけ違った職種の人たちに聞けるとよい。高校で催す「職業講話」などはよいチャンスだ。

最後に申し添えておきたい。高校までは、多くの生徒が地域の地縁の中で意識することもなく人間関係を作ってきたはずだ。地元を離れての進学は、そんな地縁とは別の新しい人間関係を自分から築く機会。いろいろな出会いを通じて人や社会を知ることは、ひるがえって自分を知ることにもなる。そこには地元を離れて就職するのとはまた違った新鮮さがある。

他では得難い、大学・専門学校進学ならではの体験だ。

(進路支援新聞 編集部)

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